昭和五十二年の冬十二月十二日は、雪と共に夜が明けた。 老探偵帆村荘六ほむらそうろくは、いつものように地上室の寝床の上に目をさました。 美人の人造人間のカユミ助手が定刻を告げて起こしに来たからである。「――そして先生。今日は人工肺臓をおとりかえになる日でございます。もうその用意...
これは氏郷に取っては旅行に足弱を托かずけられたようなもので、何事も無ければまだしも、何事か有った時には随分厄介な事で迷惑千万である。が、致方は無い、領承するよりほかは無かったが、果して此の木村父子から事起って氏郷は大変な目に会うに至って居るのである。 氏郷は何様どんな男...