こういう歌はもう二度と作れそうもない。当時二十五歳大学の三年生になったばかりの自分であったのである。 たしかその時のことである。江の島の金亀楼で一晩泊った。島中を歩き廻って宿へ帰ったら番頭がやって来て何か事々しく言訳をする。よく聞いてみると、当時高名であった強盗犯人山辺...