鮮やかな書きだしである。思わず目の前に雪野原の 風景が広がる。別天地に来たようだ。私もある冬、清水トンネルを越えたとき実感した。まさにノーベル賞作家の文 である。 「雪国」を最初に読んだのは大学生のときであったが、そのときは主題も物語性もないあいまいな小説だという印 象を...