立ち往生する国立劇場(東京都千代田区)の再整備。歌舞伎、文楽など伝統芸能の殿堂の長い「不在」は、日本の文化にどのような影を落とすのか。そこから見える社会の姿は。 ■文化の拠点整備、国の責務 児玉竜一さん(早稲田大学演劇博物館館長) 国立劇場の再整備がストップしています。老朽化した現在...
中村吉右衛門の舞台には、つねに陶酔と色気があった。 深い内面性を湛(たた)えた重厚な押し出しに加えて、陶酔の源泉は口跡のみごとさにあった。声音そのものが観客を酔わせたのである。その点では、近年の歌舞伎の歴史をさかのぼってみても、実父八代目松本幸四郎...