「広島は防げるでしょうね」と電車のなかの一市民が将校に対むかって話しかけると、将校は黙々と肯うなずくのであった。……「あ、面白かった。あんな空中戦たら滅多に見られないのに」と康子は正三に云った。正三は畳のない座敷で、ジイドの『一粒の麦もし死なずば』を読み耽ふけっている...