古い意味の士分の家に対しては、歴史的に関係のある村方・浦方の人々は尊敬を失ひませんでした。が、新しい物産の為の士分の者に対しては、別段、主従・親方子方の感情も持ちませんでした。其に此処では、班田制度が、尠くとも戦国以後、ずつと行はれてゐたものと見えますが、此をわりと言...
志賀の鼻を出離れても、内海とかはらぬ静かな凪ぎであつた。舳の向き加減で時たまさし替る光りを、蝙蝠傘に調節してよけながら、玄海の空にまつ直に昇る船の煙に、目を凝してゐた。艫のふなべり枕に寝てゐて、しぶき一雫うけぬ位である。時々、首を擡げて見やると、壱州イシユウらしい海神...
古い意味の士分の家に対しては、歴史的に関係のある村方・浦方の人々は尊敬を失ひませんでした。が、新しい物産の為の士分の者に対しては、別段、主従・親方子方の感情も持ちませんでした。其に此処では、班田制度が、尠くとも戦国以後、ずつと行はれてゐたものと見えますが、此をわりと言...